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ロジカルシンキングで共感を得る方法ーその①「共感を得られない」理由を知る

前回のエントリーでは、共感を生むためには大義が欠かせないという話しをした。大義は共感を得やすいし、大義に反対する人は絶対数で見れば少ないから。ただ、大義を掲げても共感を得られないこともある。そこで、今回は、なぜ、共感を得られないのか?ということについて掘り下げておきたい。

 

例えば、「エネルギー問題」を題材にして、大義を掲げてみよう。

原発には反対だ。これからは自然エネルギーに転換すべき。僕たちの未来にはクリーンなエネルギーが必要だ」

間違ってはいないが、この順序で説明すると、以下のような反論に合う。

原発には反対という姿勢

 →いや、必要だ。これだけ高エネルギー社会においては原発の悪よりも、社会の維持を考えたら、すぐに原発を止めることはできない。原発の害については別の問題として議論しよう。

・これからは自然エネルギーに転換すべきという姿勢

 →自然エネルギーはコストがかかる。開発にもコストやエネルギーがかかる。今の社会をすべて自然エネルギーで賄うのはムリがないか?

・僕たちの未来にはクリーンなエネルギーが必要だという姿勢

 →これからはクリーンエネルギーの時代だと思うが、太陽光にしたってまだまだコストが高い。確かに未来には必要だが、その未来は、僕たちの未来の先なのではないか?

 

本当に上辺だけの内容なので、中身についての言及は避けて頂きたい。ここで、注目するのは「聞き手の心位置」である。

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心位置とは、私の中のイメージである。シーソーみたいなものがあり、その片方に自分が居て、もう片方には相手がいる。自分の方に傾けたいのであれば、相手の心を自分の方に寄せる必要がある。シーソーの上には玉になった相手の心があり、どちらかに転がろうとゆらゆらしている。その玉を自分の方に近づければ、自分の方が沈む。この状態こそ、共感を得たことである。なので、その球体の心が、シーソーの何処にある?というのが「心位置」という言葉の意味だ。

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共感を得るには心位置をコントロールしないといけない。共感とは、ほぼ100%、同じ意見の時にのみ起きる現象だ。まぁいいかという賛同は、共感ではない。かならず後でほころびが出る。共感しないから主体的にも動かない。賛同者は、まぁよくわらかんけど賛同するよ、みたいなスタンスも含まれるのでいざ行って時には、戦力にはならない。呼びかけに応じてもらわないと戦わない。呼びかけなければ戦わないし、呼びかけても応えないこともある。つまり、共感者以外の賛同者なんて、ほんとは意味がないことを知った方が良い。

 

さて、先ほどの単文を心位置の動きと確率を考えて読んでいこう。

最初の「原発には反対だ」のように、人は、目の前の人が片方の立場を明確にした段階で、自分自身は身構えてしまうものだ。素直に賛同する人もいれば、反対する人もいる。ここの割合は、仮に「大勢の人が賛成しそうな内容だから、7:3で賛成してくれるはずだ!」なんて思っていたら大間違い。相手からしたら、「賛成」か「反対」の2つに1つなので、実際は、5:5の確率。あなたは決して、その他大勢に話しをしているわけではなく、目の前の一人に話しをしていることを忘れてはならない。話しはじめたら、相手の意見が賛成/反対かは、常に確率は5:5なのだ。

 

そうなると、原発に反対しているかしていないかがわからないまま次の言葉に移る。

 

次の「これからは自然エネルギーに転換すべき」は、べきって言葉だけで賛同されないケースも多いので注意が必要だ。ただ、それ以上に大切なのが、「こうした方がいいね」という意見は、それまでの心位置によって、その後の可能性が大きく変えているということを忘れがちだ。つまり、賛成/反対がわからない段階での次の中身に移行しているのだから、次を話しでも、賛成/反対に分かれるため以下の4つのパターンに分かれているのだ。①最初は賛成/後も賛成、②最初は賛成/後は反対、③最初は反対/後は賛成、④最初は反対/後も反対、の4つであり、この段階で、共感を得られる可能性は、全体の1/4なんと25%しかないのだ。

 

そして、25%の可能性しかない相手に最後のメッセージを送る。

 

最後の「僕たちの未来にはクリーンなエネルギーが必要だ」という言葉は、わずか25%のしかない共感の可能性にかけたメッセージとしては実に軽薄だ。こんなことは小学生でも言える。この可能性がほぼないところに来て、最も一般的な意見を言うと「こんな当たり前のことを言われてもねぇ....」という残念な気持ちが芽生えて来るため、先ほどまでは、25%あった可能性自体を賛成/反対で、さらに半分の12.5%に削ってしまう。「当たり前なことを言われても共感なんてしにくいわよ」と。これでは心位置へのダメージは大きい。まず共感は得にくいだろうなーと思う。この場合、この話し方で8人に伝えれば、1人くらいは賛同してくれるだろう。しかし、ここでも大きな落とし穴がある。それが穴だ。「同じ穴の狢」という言葉があるように、普段から一緒に居る人に話してみたら共感を得られる可能性が高まる。つまり、1/8しか可能性がなくても、自分の周りに1/8が居るということだ。なので、身近な人に意見を求める時は、この共感を得られないロジックに自分自身がハマっていないことを確信している時だけにした方が良い。

 

さて、話しを戻す。

正直、私は、先ほどの単文は、内容的には間違ったことは言っていないと思うが、なんとなく言葉にできないモヤッとしたものを常に抱えながら次の言葉を聞いていくような感じがする。そのため、素直に共感できないメッセージなのだが、そのモヤっとしたものを言語化すると、おおよそ先のような心理変化が多少なりとも生まれ、可能性を削ぎ落して行く話しの運びになっていると感じ、そのなんとなくダメな感じに、素直に共感が出来ない、という結論に至るのではないかと思う。

 

では、そうならずに共感を得るにはどうしたら良いのか?という点については、次回にまとめていく。

 

最後は宣伝です(笑)。このようなワークショップをやってますので、興味ある方は是非、お声掛け下さいませ。悩んでいても、意外に簡単に結論が出る場合もありますよー。