コンテクスト・シンキング

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ロジカルシンキングで共感を得る方法ーその③「考え抜くための考え方」を知る。

前々回から始まった「共感」シリーズ、今回で3回目となりました。

これまでの2回で、「共感を得るには大義が必要であり、大義を表明することは、共通認識を確認し、相手と自分は同じ土俵に立っているんだよ」ということを示すことからスタートする、というお話をしました。家で言えば、基礎工事をしっかりして土台をちゃんと作りましょうね、という感じです。

大義を土台として成立する共感ストーリーで言えば、「コンセプト」が大切なのですが、コンセプトを設定するのに必要なのが、「物事を考え抜く」ことです。

 

考え抜くことが出来れば、良いコンセプトが出来ます。良いコンセプトは考え抜いた結果なのです。なので、決して、センスで導かれるとか、そういう類いのものではありません。

 

では、どう考えるのか?ということですが、コンテクストを読み解くことにあります。

例えば、企業の場合、何か改革したいことがあるとします。

改革を推進したい人は、どうやったらいいか、何をしたらいいかを考えます。考えて考え抜いた後に、具体的なアイデアを思いついたとします。

先の話では、この場合、思いついたアイデアを話す前に、なぜ改革が必要なのかを話し、改革の方向性について示して共感を得て、最終的に具体的なアイデアを提示することで、共感を得られるストーリーが出来る、と話しました。

そこで肝心なのがアイデアとなります。このアイデアが目も当てられないようなものであれば、いくら正しい順番で話したとしても、共感を得られることはないでしょう。アイデアは、大義の上に成り立ち、しっかりと本質を見抜いていないといけないのです。

 

では、アイデアと聞いて、どのようなイメージを持ちますか?私は穴埋め問題のイメージに近いのです。

 

1つ具体的な例をお話します。

私は地元のコミュニティFMに関わっているのですが、そこで、「良い番組とは何か?」ということについてスタッフと話しをしました。

前提としては、まず最初に「ラジオ局の売上を上げるにはどうしたら良いか?」と聞き、その結果、「リスナーを増やす」という話しになり、そのためには「たくさんの人に聞いてもらえるような番組を作る」という答えが返ってきました。そこで、「たくさんの人に聞いてもらえるような番組」をラジオ局に取って「良い番組」と定義した際に、「良い番組」とは何か?という展開になったのです。そこで出て来るのが「共感を得られる」「口コミで話したくなる」などの言葉でした。

では、「共感を得るにはどうしたらいいか」「人に話したくなるようなこととはどんなことか?」と聞いていきます。すると、「あるあるネタ」「スーパーのお得な情報とか」ということでした。で、それをどんなリスナーに向けて放送をすると「良い番組」になるのか?「主婦が良い」「子育てママ」「専業主婦」などの答えが返ってきました。

このように、質問を繰り返していくと、「たくさんの人に聞いてもらえるための番組」が「良い番組」だったはずなのに、いつのまにか、「女性で30代くらいで子育て中」をターゲットにした番組にすり替わってしまうことがわかります。

整理するとこんな感じです。

①目的:売上をあげたい

②どうやって?:たくさんの人に聞いてもらえる番組を作る

③どんな行動を期待するか?:共感を得て欲しい、口コミで広がって欲しい

④何をすれば実現するか?:あるあるネタとか、スーパーのお得情報とかを流す。

⑤誰に向けて発信するのか?:主婦とか子育てママ

なんだかおかしなことになりました。これは論理的に崩壊しています。故にこの考え方は間違いなのです。

 

そこで、コンテクストに注目します。ここでは成り立ちと現状についての整理です。

私が関わるコミュニティFMは、今から8年前に開局しました。開局時はリスナーはゼロです。そこからどうやってコンテンツを増やし、売上を上げたか、その文脈をしっかりと把握します。

開局前に、コンテンツは人が持っているという仮設を立て、ボランティアを受け入れて関わる人を増やそう、つまり、関わる人を増やしてコンテンツを増やそうと考えました。

そのため、いろいろなコンテンツを持った人に番組をしてもらいました。これは、いろいろな業界の方がいたので、営業先が増えました。パーソナリティとして登場する方々の職業も、飲食店、観光施設、小売業、製造業などいろいろです。

 

最初にどうやって番組を作っていたかというと、様々な業種の方がそれぞれの業種を意識した番組作りをしていました。つまり、その市場に向けた番組作りをしていました。業界の中は割と繋がっています。例えば、車関係の仕事をしている方が番組を持つと、同業種の方が聞きだします。さらに、TwitterSNSで番組の告知などをすると、それぞれの市場の中にラジオから発信した情報が流れ出します。その結果、ラジオに興味を持ってくれた方がラジオを聞くようになります。

 

つまりは、ラジオ局は、「いつも聞いてくれているリスナーのために番組を作る」のではなく、「地域の市場に向けて番組を作る」というスタンスでしか、リスナーを拡大させる方法はないのです。

 

例えが特殊な業界ではありますが、このように、「何をする」とか、「どうやるか」とか、そんなことを考える前に、「今までどうしてきたのか」、「どうやってきたのか」を整理するだけで、今、やるべき事が導き出されるのです。

 

さらに整理は続きます。

 

先ほど、業界は繋がっていると言いましたが、そこで、市場を1つのコミュニティとして捉えてみます。コミュニティにとって有益な情報は必然的にラジオを離れて波及していきます。「どこどこの何々が美味しい」をずっと放送し続ければ、食べるのが好きな人は「食べました」と、ネットでアップし、コミュニティの中で情報を共有します。

こうやって整理をして、ようやく、番組のコンセプトを考える段階になります。

 

「美味しいモノを食べたい人」に向けた番組を作る。

 

同様に「〇〇したい人に向けた番組」と列挙していきます。「子育てしたい人」、「勉強の仕方を知りたい人」、「グループでお出かけしたい人」などなど。ここまで来ると、ラジオ局の売上が上がる番組アイデアとして、十分に使えるものになります。

 

このように、目的がはっきりしている場合は、コンテクストに注目して整理をすることで、最後には、やるべきことがあぶり出されて来ます。なので、アイデアは穴埋めに近い感覚になるのです。「ラジオ局の売上を増やしたい」という目的設定をし、「そのためにどんな番組を作れば良いのか?」と考えてしまうと、「そもそもどうしていたっけ?」というところから続くストーリー、つまり、コンテクストに気付くことなく、不毛な議論が続いてしまうのです。

 

「考え抜くための考え方」とは、コンテクストを読み解き、その上で、因果関係に注目しながら整理していくことでなのです。整理をしながら、必要なことがあぶり出されて行くのをじっと待ち、それまでは、「何をするか」は考えず、ひたすら整理をすることが「考え抜く」ためには必要なのです。